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放置すると怖い「脂質異常症」〜数値を下げることが未来を守る〜
一般内科循環器内科
脂質異常症とは?
健康診断で「コレステロールが高いですね」と言われても、自覚症状も出ないため放置されやすいのが「脂質異常症」です。
血液中にはLDLコレステロール・HDLコレステロール・中性脂肪(TG)の主に3つの血中脂質があり、バランスが崩れると問題が起こります。
- 空腹時採血で、LDLが 140 mg/dL以上 → 高LDL血症
- HDLコレステロールが 40 mg/dL未満 → 低HDL血症
- トリグリセリド(中性脂肪)が 150 mg/dL以上(空腹時)または 175 mg/dL以上(随時採血) → 高TG血症
以上の3つの状態が「脂質異常症」です。
放置するとどうなるの?
脂質異常症は、血管の内側に少しずつ脂がたまっていく病気です。
時間をかけて動脈硬化を進め、ある日突然、血管が詰まります。
その結果、
- 心臓の血管が詰まる → 心筋梗塞・狭心症
- 脳の血管が詰まる → 脳梗塞
- 足の血管が詰まる → 閉塞性動脈硬化症



こうした病気は命に関わるだけでなく、生活の質を大きく下げます。
放置した人では、10年後に心筋梗塞や脳梗塞の発症率が2〜3倍になることがわかっています。(J Atheroscler Thromb. 2023 Dec 19;31(6):641–853.)
一方、治療を続けた人では、発症率が30〜40%下がると報告されています。(Lancet. 2006 Sep 30;368(9542):1155-63.)
日本人に多いタイプ
日本人では、次のような傾向があります。
- 男性:中性脂肪が高く、HDL(善玉)が低いタイプが多い
- 女性:閉経後にLDL(悪玉)が上がりやすい
- 共通点:食べすぎ・飲みすぎ・夜遅い食事・運動不足
つまり、「少しの生活の積み重ね」で悪化するのが日本人型の特徴です。
治療の流れ
① 生活改善
まずは食事と運動を見直します。
- バターや脂身の多い肉は控える → 飽和脂肪酸の多摂取はLDLコレステロール上昇
- 魚(特に青魚)を週2回以上食べる → 青魚のEPA/DHAが血管保護・脂質改善
- 野菜・豆・海藻・きのこを多く → 食物繊維・植物性脂質・フィトステロールで脂質に好影響
- 甘い飲み物やお酒を減らす → 過剰アルコール・精製糖質の摂取は中性脂肪を上昇
- 夜遅い食事を避ける → 食べる時間帯・夜遅い食事は体内リズム・代謝機能・脂質代謝に影響
- 体重を3〜5%減らすだけでも改善 → 内臓脂肪減少
- ウォーキングや軽い筋トレを週3〜5回 → 運動によるHDL上昇・中性脂肪低下
- 禁煙も重要(HDLを上げ、血管を守る → 喫煙がHDL低下・LDL上昇・血管内皮障害のリスクを高める



② 薬による治療
生活改善でも十分に下がらない場合や、動脈硬化のリスクが高い場合に薬を併用します。
主な薬と特徴
スタチン系
体の中でコレステロールを作る酵素を抑えます。
動脈硬化の進行を止め、心筋梗塞や脳梗塞の再発を防ぐ効果が確立しています。
代表的な薬:
- ロスバスタチン(クレストール®)
- アトルバスタチン(リピトール®)
- ピタバスタチン(リバロ®)
- プラバスタチン(メバロチン®)

長期的に使いやすい薬です。
副作用は少ないですが、横紋筋融解症などが挙げられます。
コレステロール吸収阻害薬
腸でのコレステロール吸収を抑えるタイプです。
スタチンと組み合わせると効果が高まります。
代表的な薬:
- エゼチミブ(ゼチーア®)

PCSK9阻害薬(注射薬)
2〜4週に1回の注射でLDLを強力に下げる薬です。
家族性高コレステロール血症や、スタチン+エゼチミブでも下がらない方に使います。
代表的な薬:
- エボロクマブ(レパーサ®)
- アリロクマブ(プラルエント®)

EPA製剤(魚油由来)
中性脂肪を下げ、血液をサラサラにする作用があります。
心筋梗塞の再発を防ぐ効果が示されています。
代表的な薬:
- イコサペント酸エチル(EPA)(エパデールS®)
- EPA+ドコサヘキサエン酸(DHA)(ロトリガ®)


フィブラート系
肝臓で中性脂肪を作るのを抑えます。
中性脂肪が非常に高い方(TG500mg/dL以上)で膵炎を防ぐためにも使われます。
代表的な薬:
- フェノフィブラート(トライコア®/リピディル®)
- ベザフィブラート(ベザトールSR®)
- ペマフィブラート(パルモディア®)
治療を続けるとどう変わるか
- 血管の老化スピードが遅くなる
- 心筋梗塞や脳梗塞のリスクが3〜4割減る
- 動脈硬化の進行が止まる
- 生活の質(QOL)が保たれる
反対に、放置すると数年で少しずつ血管が硬くなり、10年、20年後に差が明確に出てきます。
小野クリニックでは
当院では、血液データだけでなく生活習慣や家族歴まで丁寧に確認し、
「薬は必要最小限に、でもリスクは確実に下げる」ことを方針としています。
- 生活指導と定期検査を組み合わせた継続ケア
- 動脈硬化リスクの見える化
- 薬の種類・タイミングを個別に調整
脂質異常症は気づいたときがチャンスです。
数値を整えることは、血管の若さを取り戻す第一歩になります。
まとめ
脂質異常症は症状がないまま進行する病気です。
放置すると10年後に心筋梗塞・脳梗塞リスクが2〜3倍に増えますが、治療すればリスクを30〜40%減らせることが明らかです。
小野クリニックでは万が一の後遺症や命に関わる病気を防ぐため、脂質異常症をはじめとする生活習慣病に力を入れております。
🏥小野クリニック(循環器内科、消化器内科、外科、小児科)
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